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3/19 活動更新(春コミ詳細)
#18 きもちわるいおれ(バネ←ダビ) バネさんの赤い目はぐしゃぐしゃで、そのまわりは涙の跡と適当に擦ったせいで腫れてしまっていた。 その酷い状態の目元も、眼鏡の奥でガラス越しじゃないと見えない上に、顔半分を覆ってしまうマスクのせいなのか、レンズが白くくもってしまうとそれすら見えない。だから、この時期のバネさんの顔を、俺は満足におがむことをゆるされていない。 誰に?バネさんに?違う。 花粉にだ。 「う゛ー・・・あ゛ー・・・を゛ー・・・・・・・・・・・・っぶえっくしょん!!」 「バネ、うるさい」 亮ちゃんの冷徹な一言に、言い返す気力のないバネさんは、身体を横たえているベンチの上で力なく手をひらひら振った。それが、うるさくて悪かった、ということなのか、ほっとけ馬鹿、なのか、判断はつかない。 「バーネ、そんなんじゃ練習になんないって。帰れば?」 そう言ったのはサエさんで、言葉は気遣っているようでも、テニスボールのチェックをしながらだから、いまいち心が篭っていない。というより、この部室にいる誰も、俺を除いてバネさんを心配しているようには見えない。それというのも 「毎年こうなるって分かってんのに、何で早目に耳鼻科行っとかねえんだよ?」 「だよねー。僕もそれ先月くらいに言ったのに、今年こそ治ってっかもしれねーだろ、とか意味わかんないこと言ってきかないんだよー」 サトさんの呆れ顔に、剣太郎がさらに呆れて答える。この会話も、ここ数年、毎年繰り返されているものだ。 バネさん曰く、ある年の春に前触れもなくいきなり花粉症になったのだから、いきなり治ることもありえるはずだ、と言うのだ。 「あ゛ー・・・うっせー・・・・・・他人事だと思って・・・好き放題言いやがって・・・・・・う゛ー」 「実際他人事なのね。さ、バネ。甜茶淹れたので、飲んで下さい」 「を゛ー・・・さんきゅー」 平淡に声をかけつつお茶を差し出す樹っちゃんはやっぱり優しい。「他人事」とか言っているけど。 「う゛ー・・・」 「それ飲んだら、今日はもう帰るか耳鼻科に行くかするのね」 「を゛ー・・・わ゛がっだ・・・・・・」 「はい。じゃあ、バネはそれでいいとして・・・・・・ダビデ」 不意に樹っちゃんは俺のほうに目を向けた。と言っても、さっきから唸るバネさんの枕元というか頭の横でしゃがんでいたので、目を向けるというほどの動きでもなかったのだけど。 「ダビデはそこで何してるのね?」 俺は樹っちゃんの質問には答えず、マスクを外してお茶を啜るバネさんに尋ねた。 「バネさん、つらい?」 「あ゛?見てわかんねーのかよ。・・・目めちゃくちゃ痒いっつーか痛ぇっつーか、目ん玉取り出して洗いてーくらいだっつの」 「・・・・・・そっか・・・」 「そーだよ」 そっけなく答えて、バネさんはずるずる鼻を啜った。 俺は、顔をぐちゃぐちゃにして苦しんでいるバネさんを見ながら、呟いた。 「目玉が取れたら・・・俺のと取り替えてあげるのにな」 「・・・あ゛あ゛?」 「俺の目玉、花粉症じゃないから、取り替えたら治るし」 「・・・ダ、ダビデ?おま、なに言って・・・」 「バネさんの目玉貰えるなら、俺、花粉症になってもいいし」 「・・・・・・い、いいい、樹っちゃん!!俺、花粉症のせいで幻聴聞こえるんだけど!!?」 「幻聴じゃな」 「そうですね、バネ。やっぱり耳鼻科に行きましょう。」 バネさんが変なことを言い出したので、反論しようとしたら、どうしてか樹っちゃんに遮られた。 樹っちゃんはバネさんを立ち上がらせて、剣太郎を呼ぶと、耳鼻科について行ってあげてください、とバネさんを託した。付き添いなら俺が行くのに、と言いかけると、剣太郎が部長ですから、とまた遮られてしまう。なんとなく理不尽なような気がして、助けを求めて周りを見ても、サエさんは苦笑いして首を横に振るだけだし、亮ちゃんは机につっぷして笑いを堪えているし、サトさんは口を開けたままぴくぴく顔を引き攣らせているので、誰も俺の援護をしてくれないのだった。 そうこうしているうちに剣太郎はバネさんの荷物を持って、バネさんの手を引いて部室を出て行ってしまい、残された俺に亮ちゃんが笑いながら言った。 「そ、それは、さすがに、気持ち悪い、よ・・・くくく・・・」 「きもちわるい?」 「あー・・・まあ、俺はダビデの気持ち分からなくもないけど、あんま口に出さないほうがいいと思う」 「・・・きもちわるいの?俺?」 サエさんに気持ちが分からなくもないと言われたことも、微妙にショックで、サトさんと樹っちゃんを見ると、2人とも気まずそうに目をそらした。 ---------------------- ※バネはダビデに恋愛感情を持たれていると思っていません
管理人 花椿
キング
Mail : hanatubaki-king*mail.goo.ne.jp(*→@)
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